びまん性脱毛症は、薄毛や抜け毛を引き起こす女性に多く見られる疾患です。今回は、そのびまん性脱毛症の症状や原因について詳しく解説します。また、自宅でできるセルフケアや治療法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
びまん性脱毛症とは?
瀰漫(びまん)という言葉には「一面に広がる・はびこる」という意味があり、びまん性脱毛症はその名の通り、脱毛が髪全体に広がってしまう疾患です。症状が進行すると抜け毛が増え、徐々に髪全体のボリュームが失われていきます。
主に40代以降の女性に多い症状ですが、加齢や生活習慣の乱れなどさまざまな要因によって、男性でも発症する可能性があります。男性の場合、生え際や頭頂部から抜け落ちるケースが一般的ですが、びまん性脱毛症は頭髪全体が徐々に薄くなっていくため、症状の進行に気づきにくい傾向があります。また、進行性の疾患なので、心当たりがある方は早めに医療機関へ受診することをおすすめします。
びまん性脱毛症の初期症状
以下の症状が当てはまる場合、びまん性脱毛症の可能性があります。該当する項目はないか確認してみましょう。
- 髪のボリュームが減ってきた
- 地肌が透けてみえるようになった
- 抜け毛が増えた
- 細く短い毛が多い
- 髪にハリ・コシがなくなった
びまん性脱毛症の検査方法「毛髪牽引試験(hair pull test)」
びまん性脱毛症かどうか確かめる方法として、毛髪牽引試験が行われる場合があります。具体的には、頭皮の3カ所以上で約40本を引っ張ってみて、抜けた毛髪の本数を数えます。正常であれば、1回の牽引で抜けるのは3本程度ですが、これが4~6本以上抜けてしまうとびまん性脱毛症である可能性が高くなります。
ただし、この試験方法は個人に委ねられる部分が多いため、自分で行う際はあくまでも参考程度にとどめ、医師の診断を受けるようにしましょう。
びまん性脱毛症の主な原因は「ホルモンバランスの乱れ」
女性のびまん性脱毛症の大きな原因の一つが、ホルモンバランスの乱れとされています。
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類に分けられ、このうちエストロゲンは、骨を丈夫にしたり、乳房や生殖器の発達など女性らしい身体をつくったりする役割があります。この働きは毛髪の生成にも寄与しており、ハリやコシのある健康的な髪をつくるうえで欠かせない要素の一つです。
そのため、女性ホルモンの分泌量が減少すると、細く短い髪が増えて全体的に薄くなると考えられています。
ホルモンバランスが乱れるのはなぜ?
びまん性脱毛症の引き金であるホルモンバランスの乱れはどうして起こるのでしょうか。以下の4つの要因から、びまん性脱毛症を引き起こすきっかけを探っていきましょう。
加齢
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量は、否応なしに加齢に伴い大きく変化します。
初潮を迎える思春期から急激に分泌量が増え、ピークは20代後半から30代前半ごろ。30代後半になると徐々に減少しはじめ、閉経前後の40代後半から50代前半には激減します。
このためびまん性脱毛症は、女性ホルモンの減少がはじまる30代後半から40代で発症しやすいと言われています。
不規則な生活・睡眠不足
不規則な生活や睡眠不足などもホルモンのバランスを乱す原因になります。例えば、無理なダイエットで食事量を少なくしたり、睡眠不足が何日も続くと、自律神経や免疫機能のある脳の視床下部・下垂体の働きが弱くなります。するとホルモンの分泌が滞り、結果的に女性ホルモンの減少につながってしまいます。また、生活習慣の乱れは、頭皮の血行不良にもつながります。血行不良になると、毛髪に十分な栄養が届かず、発毛機能が低下してしまいます。
髪へ悪影響を及ぼしている行動を習慣化していないか、見直してみましょう。
【生活習慣を乱す行動】
・無理なダイエット
・栄養の偏った食事
・睡眠不足
・運動不足
・過度な飲酒
・喫煙
ストレス
過度なストレスもホルモンバランスに影響をきたす要因の一つです。ホルモンは脳や神経からの指令でコントロールされています。温度差や騒音等の物理ストレスや、人間関係や仕事上の心身的ストレスなどが蓄積されると、脳の機能が低下し、ホルモンバランスが乱れやすくなります。
ジヒドロテストステロン(DHT)の影響
薄毛の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の影響を受けて、びまん性脱毛症につながる可能性があります。男性ホルモンDHTが、毛乳頭の男性ホルモン受容体と結びつくことで新しい毛髪の成長が阻害されてしまい、ヘアサイクルが乱れ、薄毛が進行してしまいます[1]。DHTを原因とする女性の薄毛は「FAGA(女性男性型脱毛症)」とも呼ばれます。
FAGAの原因や治療法は以下のコラムで詳しく解説しています。
▷【医師監修】女性のAGA(FAGA)の原因と治療法
びまん性脱毛症にならないための予防・対策
びまん性脱毛症にならないためには、日ごろから、ホルモンバランスや頭皮環境を整えておくことが大切です。まずは、以下の3つの行動を心がけて生活してみましょう。
①バランスの取れた食事
これを食べればびまん性脱毛症が治る! といった特別な食べ物は存在