フィナステリドはAGA(男性型脱毛症)治療薬の代表格です。以前は「プロペシア」という製品のみでしたが、2015年以降はジェネリック医薬品も解禁となったことで費用面の負担が軽減され、より身近な治療薬となりました。
ただ、フィナステリドのどんな働きからAGA改善効果が生まれるのか、実際に効果はあるのか、またその効果はいつから実感できるのか…。身近になったからこそ気になることも多いというもの。そこでAGA専門クリニックの医師がデータも交えて解説します。副作用や服用時の注意点、他のAGA治療薬との違いなどの情報もまとめたので、フィナステリドを有効に活用するためにも、ぜひ参考にしてください。
フィナステリド(プロペシア)とは
AGAでは薄毛や抜け毛の進行を抑え、極端に短くなってしまったヘアサイクルを元に戻すことを目的に利用されているフィナステリドですが、一部の男性ホルモンの生成を抑制する働きから、最初は海外で前立腺肥大症の治療薬として販売されました。その臨床試験でAGA患者に脱毛の抑制効果が見られたため、AGA治療薬としても研究開発されることとなったのが「プロペシア」です。
1997年にはアメリカ医薬品管理局のFDAの認可を受け、安全性の高い治療薬として認知されました。いまでは日本も含め60ヵ国以上で認可され、世界で広く利用されています。
プロペシアのジェネリック薬も複数存在
以前は、フィナステリドを主成分とするAGA治療薬はMAD製薬が開発したプロペシア※がスタンダードでしたが、2015年にプロペシアの特許権は満了となり、現在は多くのジェネリック医薬品が販売されています。例えば、フィナステリド錠「ファイザー」。ファイザー製薬が製造販売するジェネリック医薬品です。他にも、沢井製薬の「サワイ」、東和製薬の「トーワ」、クラシエが販売する「クラシエ」、武田製薬の「武田テバ」などが存在します。
ジェネリック医薬品は添加物などで内容は少し異なりますが、AGAに対する有効成分であるフィナステリドの含有量は同じです。いずれも、プロペシアより効果が劣るようなことはありませんのでご安心ください。
※現在のプロペシア製造販売元は、MSD社から分社したオルガノン社。
フィナステリドのAGAへの効果
AGA患者414例を対象に約1年間(48週間)プロペシアを投与した臨床試験では、写真で見た頭頂部の毛髪の変化を7段階のスコアで評価した結果、0.2mgは54.2%、1mgでは58.3%に「薄毛の改善が判定された」と報告されています[1]。
そもそもAGAは、男性ホルモンの一種「テストステロン」が「5α-リダクターゼ」という体内の酵素によって「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換されることが原因です。DHTは髪の毛の成長を司る毛母細胞の増殖の抑制に関係するため、ヘアサイクルが乱れ、抜け毛・薄毛が進行してしまうのです。
フィナステリドには5α-リダクターゼを阻害する働きがあります。つまり、服用し続けることでDHTの数が減少すると考えられます。この作用でヘアサイクルが正常に戻っていくため、髪の毛が太く長く成長するようになり、薄毛の改善につながるのです。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、AGA治療へのフィナステリドの使用は推奨度Aで、強く勧めるとされています[2]。
効果はいつから現れるのか?
薬の服用で気になるのが、効果が現れるまでの期間かと思います。実はフィナステリドを服用しても、薄毛の改善効果はすぐには実感できません。3~4ヵ月後くらいで効果を実感されるケースもありますが、だいたい6ヵ月後を目安とし、それまでは効果に不安があっても根気強く服用を続けましょう。プロペシアの添付文書にも「効果が確認できるまで6ヵ月の連日投与が必要」との記載があり、1日1回1錠の服用を継続することが大前提となります。
AGAで短くなったヘアサイクルを元に戻そうとする働き自体は、フィナステリド服用開始後すぐに始まっています。ただ、ヘアサイクルが正常に戻り、毛髪が長く太く成長するようになるには時間がかかります。そのため薄毛が目立たなくなったと実感するまで数ヵ月かかるのです。
フィナステリドを服用し続けると効果はなくなる?
「ずっと薬を飲んでいると耐性がついて効かなくなる」と思われるかもしれませんが、長期服用で耐性ができるという報告はありません。プロペシアの臨床試験でも3年間の継続服用において、98%の割合でAGAの進行は見られなかったこと、1年継続より3年継続した方が改善例の割合が増加したことが報告されています[3]。
ただ、フィナステリドは抜け毛を減らす薬で、発毛を促す薬ではありません。そのため、フィナステリドだけの処方では効果のピークが訪れると、徐々に効果が薄くなってきたと感じるようになる可能性があります。ピークがいつくらいなのかはAGAの進行具合によって異なり、初期であるほど長く薄毛改善の効果を実感できると考えられています。
効果がない場合の原因は?
ただし、効果が実感できないというケースがゼロではないことも確かです。その場合は下記のような原因が考えられます。
- 薄毛の進行度に最適な用法・用量でなかった
- 個人輸入した薬を服用していた
- AGAではなく他の原因による薄毛だった
薬の用法・用量を守らなければ、最大限の効果を得ることはできません。毎日きちんと服用していないと効果が現れにくいでしょう。個人輸入では成分の濃度が保証されづらい偽造医薬品のケースもあり、その場合の薄毛改善は当然期待できません。また、フィナステリドはあくまでAGA治療薬なので、AGAでなければ効果は得られません。
さらに、効果を実感するまでの期間には個人差があります。進行具合や薄毛に至るまでの期間などが関係するためです。6ヵ月というのはあくまで目安なので、効果を実感できない場合も、自己判断で服用をやめたり増量したりせず、必ず医師にご相談ください。ミノキシジルを併用する、治療薬を変更するなど、診察に基づく適切な指示があるはずです。
参考コラム
▷「AGA治療で「効果がない」と後悔する7つの原因と満足する人の特徴」
フィナステリドの服用前に知っておくべき副作用
副作用のない薬は存在しません。フィナステリドは安全性の高いAGA治療薬ではありますが、いざというときも慌てることなく対応できるよう、副作用もきちんと把握しておきましょう。
フィナステリドの副作用 |
|
---|
性機能障害の内容や発現率
男性ホルモンの生成を抑制するフィナステリドの副作用としてまずあげられるのは、性機能障害です。具体的には下記のような症状があげられます。
●リビドー減退(性欲減退)
●勃起機能障害
●射精障害
●精液量減少、精液の質低下
●睾丸痛
副作用を並べると不安になるかもしれませんが、これらの症状はフィナステリドの服用を中止することで改善されることがほとんどです。また、臨床研究でもっとも多かったリビドー減退でも、発現率は1.1%だったと報告されています[4]。
肝機能障害の内容と注意点
フィナステリドは肝臓で代謝されるため、服用することで肝臓に負担がかかり、肝機能障害を起こすリスクがあります。肝機能障害の影響では次のような症状が現れます。
●倦怠感
●吐き気、嘔吐
●食欲不振
●発熱
そもそも薬は肝臓で代謝されるものが多く、肝機能障害はフィナステリドに限った副作用ではありません。このような症状が見られた場合は、慌てず速やかに医師に相談し、服用の中止や薬の変更などの指示を仰ぎま
その他の副作用
その他、下記のような副作用もフィナステリドで起こり得ますので、服用後に少しでも異変があればすぐにかかりつけ医に相談しましょう。
●抑うつ状態……気持ちが落ち込む、めまいなど
●アレルギー……かゆみや発疹
●乳房への影響……乳房圧痛、乳房肥大
副作用が続くポストフィナステリドシンドローム(PFS)
フィナステリドの副作用は、服用を中止すれば治まるケースがほとんどです。ただ、服用中止後も副作用が続くことがあり、これをポストフィナステリドシンドローム(PFS)と言います。発端は2011年にアメリカの医師らによる「服用中止後も副作用の続いた症例がある」との報告でした[5]。そこから問題視されるようになり、現在では一部のフィナステリド治療薬の添付文書にも「投与中止後も持続したとの報告がある」といった一文が記載されています。
気になる原因ですが、そのメカニズムは未だ明確になっていません。フィナステリドの作用の影響とする仮説もありますが、同じくフィナステリドの働きを利用した前立腺肥大の薬などでは、副作用が継続したという報告はありません。一方で「精神的要因(思い込み)が影響しているのでは?」という仮説も研究されています。
フィナステリドは副作用自体を経験しないケースの方が多いですし、ポストフィナステリドシンドロームの症例数も全体からするとごく少数ではあります。ただ、起こり得ることも視野に入れ、治療開始後もこまめに相談でき安心して治療が続けられるクリニックを選ぶことをおすすめします。
フィナステリドを服用する際の注意事項
副作用の他にも注意することや禁忌事項があります。こちらもきちんと把握して、診察時に医師に伝えておくべき点などを押さえておきましょう。
女性の服用は危険! 妊婦は絶対にNG
女性にもFAGA(女性の男性型脱毛症)がありますが、フィナステリドは男性の男性型脱毛症の治療薬です。女性の薄毛に効果は認められていません[6]。
特に妊婦さんや妊娠している可能性のある女性は、触れることも厳禁です。AGAでは悪者のDHTも男性ホルモンの一種で、薄毛の原因となる以外に、胎児の男性器を分化させる役割も担っています。そのため、妊娠中に服用してしまうと胎児の生殖器の発達に悪影響を与えてしまう恐れがあるのです。実際に母乳へフィナステリドが移行するかは不明ですが、授乳中も禁忌となっています。
しかも、皮膚からフィナステリドを吸収して影響が及ぶ可能性も考えられるため、触れることも危険です。通常、薬はコーティングされているので成分が肌に触れる心配はありませんが、割れたり砕いたりした場合は危険性があるため、添付文書にも薬を分割・粉砕しないよう記されています。
肝機能障害のある方は医師に相談
フィナステリドの代謝は肝臓で行われるため、もともと肝疾患のあるケースに対しては臨床試験が行われていません。肝機能障害を患っている方は、必ず事前に医師にその旨を申告し、相談しておきましょう。
20歳未満と高齢者における注意点
プロペシアをはじめフィナステリドの安全性や効果は、20歳未満の男性では確立されていません。そのため対象は20歳以上の男性となります。
また、臨床試験で高齢者と非高齢者とで副作用の発現率に大きな違いは認められていませんが、高齢になると一般的に代謝機能と生理機能が低下していることが考えられるので、より副作用への注意が必要です。
フィナステリドと他のAGA治療薬との違い
AGA治療薬にはプロペシアなどのフィナステリドを用いたものの他に、現在ではミノキシジルやデュタステリドといった成分を用いた医薬品もあり、選択肢が増えています。
主成分 | 主な内服薬の名称 | 効果 | 副作用 |
フィナステリド | プロペシア | 5αリダクターゼII型を阻害 | 胃部不快感/性欲減退/勃起不全/肝機能障など |
デュタステリド | ザガーロ | 5αリダクターゼI・II型を阻害 | 胃部不快感/性欲減退/勃起不全/肝機能障など |
ミノキシジル | ミノキシジル | 血流を促進し毛母細胞を活性化、発毛を促す | 初期脱毛/めまい/むくみ/体毛の増加/肝機能障害など |
フィナステリドとデュタステリドの違い
男性ホルモンのテストステロンをDHTに変換する酵素「5αリダクターゼ」を阻害する働きは同じですが、5αリダクターゼには2種類あります。ひとつは、ほぼ全身の皮脂腺に存在しているⅠ型。もう一つは前頭部や頭頂部に多いⅡ型です。フィナステリドがⅡ型に有効なのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。そのため、6ヵ月服用してもフィナステリドの効果がない場合は、デュタステリドへ切り替えを検討することもあります。
フィナステリドとミノキシジルの違い
他2つの成分とは働きや目的が異なるのがミノキシジルです。毛髪に必要な栄養を届ける血流を促進する作用があるため、毛母細胞を活性化して、毛髪の成長を促す効果が期待できます。つまり、フィナステリドが抜け毛・薄毛を抑制するのに対し、ミノキシジルは毛髪を太く長く健康に成長させる働きを担っているのです。
AGAの進行具合によっては、この2つを併用して治療を行うケースも少なくありません。当院でも単体処方だけでなく、フィナステリドとミノキシジルを主成分にビタミンやミネラルを配合した「スマイルAGA処方」など、様々な症例に対応できる選択肢を設けています。
ミノキシジルについて詳しくは、下記コラムを併せてご覧ください。
▷「ミノキシジル【効果と副作用】女性も使える? もしやめたら?」
薄毛を改善するなら専門クリニックへ相談
AGA治療における有効性や安全性が世界的に認められているフィナステリドですが、副作用のリスクもゼロではありません。発現した際にすぐに相談し適切な対処を行うためには、医療機関での処方がベストです。さらに言えば、通販で個人輸入したものは偽造医薬品の可能性もあり、効果が得られなかったり、人体に悪影響を及ぼすことも考えられます。
そもそもフィナステリドが最適な治療薬かどうかの判断が必要です。まずはAGA専門クリニックの医師に相談いただき、ご自身の薄毛に効果が期待できるかどうか診断を受けられることをおすすめします。当院でも、まずはお気軽にご相談いただけるよう無料カウンセリングを設けておりますので、ぜひご利用ください。